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イベントレポート

川島織物セルコン
播州織物見学会

 兵庫県の北播磨地域に展開する播州織は明治維新の時代から綿布業の企業地として始まる。昭和の時代には業者数270軒、織機台数8300台を数えるほどの産業地域として発展し、黄金時代を迎える。第二次世界大戦後は高級綿布生産の方向性のもと、アメリカ市場開拓を皮切りにカナダ、オーストラリア、中南米、アフリカ、欧州の一部に販路を拡大し、全世界市場を商圏とした第二次黄金時代を築いた。昭和40年代には力織機から革新織機に移行し、現在では新商品の開発に取り組み、ファッション・テキスタイルの最新情報を発信できるような創造性豊かな産地づくりに努力されている。

 この度、西カルチャー&コミュニケーション部会による繊維産業の現場を見て•現場を知り・そして学ぶ機会として、国内最大の先染綿産業の産地見学を行った。今回の参加者は会員13名、非会員2名、合計15名にて見学会を実施した。

 最初の見学先は東播染工株式会社に訪問し、先染織物としての経糸と緯糸の染色工程を見学した。織る前段階としての糊付け工程では染色の濃度によって糸が分類され、色の毛羽が混じらない工夫がされていた。その後、別棟の建物にて製織の工程を見学した。ここでも温度、湿度管理のもと繊細なものづくりの現場を感じることとなった。現在、50〜70番手の単糸を使用したシャツ、ブラウスなどの衣料としての生地生産である。生産においては現在、ストレッチなのどの特殊加工を差別化にしている。

 次の訪問先の岡治織物では、多種多様な織物の生産を見学することができた。中でも60番単糸で織られた袋織りの生地の風合いはとても良く、参加者の目を引いた。北播磨の産地では数多くの織物工場がものづくりを試行し、今回はその一社を知ることができた。

播州織物見学会

播州織物見学会

 三つ目の訪問先の播州織工業組合では各織物工場で生産された織物を整理加工する最終段階の現場見学を行った。工場内に入る前に全工程の説明を受け、2つのグループにて各現場での詳細な説明を受ける。原反が工場に入る前と最終段階を終了した生地の風合いの違いを感じて欲しいとのお話から始まり、まずは織物工場から入荷した状態の織物の触感を体験する。次に毛焼き、糊抜き、マーセライズ加工の現場を見学した。貨物列車が大きくなったような工場内の機械に織物が吸い込まれるかのように次々と加工工程の流れを通過する。洗いは地下水を利用しており、産地ならでは工程である。その後、レジン加工、防縮加工、特殊風合加工を経て検査の段階に入る。織物の縮みは出荷時1〜3%におさえ、チェック柄など形のずれが目立つような柄に対しては細心の注意を心掛けている。加工後の検査においても、コンピュータによる管理システムが行われ、生地のトラブルなどを出荷後のアパレル企業、縫製企業との連携の中、対応措置が取られる体制がある。加工、検査において各工程の人間による経験、技術により、きめ細やかな日本のものづくり、播州織物を体感できた。また、今日では多種多様な要望に応えるため、一反からの出荷にも対応している。

播州織物見学会

播州織物見学会

播州織物見学会

 最後の見学先の門脇織物株式会社ではASABAN Shop「あおやま」とASABAN Showroomを訪問し、綿織物の織機を利用したリネン織物の生産現場を知ることになった。これまでの大量生産を主とする産業から、手作りの感覚を生かしたものづくりを体感した。海外においては、リネン、ラミー、ジュートなど麻の区別がされているが、日本では天然繊維の中の一つとして「麻」と括られることが多い。門脇織物ではASABANプロジェクトと題した「日本のふだんに、日本のいいものを」をテーマにリネンの持つ、吸水性、保湿性、抗菌・防臭性の特質をかかげたものづくりを実践している。ショップではリネンの種から栽培、糸づくりの説明を受け、生産された生地、衣料関連商品などを手に取りながら体感した。

播州織物見学会

播州織物見学会

 今回の見学会は四ヵ所の見学先を訪問し、非常に盛り沢山な内容であった。東播染工株式会社、岡治織物、播州織工業協同組合の三ヵ所の見学先に関しては播州織物の生産工程を見て知ることができ、大変有意義な時間でした。また、門脇織物株式会社ではハンドメイド感のある生産を見ることができ、新しい播州の顔を発見できた。実際、足を運び現場を見ることで、改めて日本のものづくりの良さを知ることができた見学会であったと同時に、参加者のみなさまにおかれましては今後の活動のための貴重な時間となったことと思っております。

 この度の見学会のコーディネイトをしていただいた北播磨地場産業開発機構の専務理事足立様、TDAの国米様には大変感謝しております。また、雨の降る中、ご参集していただいた参加者のみなさまとともに見学会を行えたことも心から感謝しております。

(文責:田中孝明)