大阪TDAテキスタイルスクール
日時:9月13日
場所:大阪化繊会館

スクールの後半である第2期、『プロのデザインビジネス講座』が約30名の参加者を得てスタートしました。

今回からは、講議を聞く形ではなくナビゲーターが質問をして、講師に話しをしてもらう方式を取り、向き合う形を止めようという試みがなされました。

第1部は、岡本正大講師と尾原ナビゲーターで始まりました。「クライアントとの共業ビジネス」をテーマに、ブランドやコンセプトワークを中心にした話しを伺いました。アメリカンファッションへのあこがれの世代であったことや、VANに対して素材提案などをしていた会社時代があり、(有)スタッフを設立し、今日に至ったという岡本氏の背景説明が有り、自然とコンセプトワークについての話しに興味がわいてきました。80年代からの具体的な仕事をヴィジュアルを見ながらの解説では、見せていただきながら説明があり、ブランドとは、コンセプトワークとは、というものが解りやすかったし、ブランドビジネスの大枠を理解できました。ビジュアルマップによるイメージの構築が、ブランドには欠かせないものであり、社会背景や市場変化を踏まえてのブランドイメージから始まり、ショップイメージやショップ用のアクセサリーまでが、最初の段階で方向付けられています。入り口から出口まで一貫したものの考え方をして、市場に根付かせるという大きな構想のもとにブランドが成り立っています。又、ヴィジュアルマップは企業のトップに理解してもらう為にも、有効な手段であることも語られました。

 これからの新しいプロジェクトの話しや、コンセプトワークには資料整理が重要であること。ビジネス上のポイントとしては、先がどうなっていくのか、何が望まれているのかを見据えることなど、尾原氏とのやりとりの中で話しが進み、岡本氏の仕事にたいする姿勢が伺えました。

 第2部は、北川陽子講師と滝口ナビゲーター。「湖東産地からの提案?いうことで、伝統的な織物の産地でありながら、常に新しい試みをされてきた北川氏のお話です。湖東地区は近江上布の産地で、経糸捺染のほぐし、糸を縛って染めて織る絣、緯糸に撚りをかける縮み、を特徴とする先染めの産地です。かつては、婚礼布団を中心に寝装品を多く生産していましたが、20年前産地振興事業が始まり、インテリアや洋服などの生地へ方向を変えていきました。北川氏はデザインから、染め、織りまでを工場で行い、作品を発表をする作家活動をされてきましたが、有名ブランドのデザイナーといっしょに物作りをすることも経験されました。

 不況に入るが、地元のクラフト展にはじまり、デパートやギャラリーの展示が増えていくき、製品のアイテムも増やして直接販売までやってこられました。今は物作りをする作家に戻ろうと考えているそうで、そこには、職人の手仕事を残していきたいという、産地に対する熱い思いが感じられました。日本の産地の方向は?との問いに、物を作れての産地であり、上質な物作りをしていきたいと。又、物作りの体験を多くの人にしてもらいたいということから、学生の作品作りに場所を提供したり、中学の職場体験学習をはじめるなど開かれた工場を目指しているそうです。工場設備があるので場所を使ってください。いっしょにやりましょうと、みなさんへの呼び掛けもありました。

 第3部では、講師の2名とナビゲーターの2名が入り交じってのトークになりました。産地の外に出して消費者に売ることについて、川中産業が生き残るにはどうししたら良いのか、ブランド化、作るから売るまでの一貫性、SPAや産地の分業体制の中におけるコーディネーターの役割など多岐に渡る話が続き、中身の濃い講座でした。最後に、次の世代については、会場の出席者も交えてのトークになり、芸大のインターン制度と産地の受け入れ、学生への指導とTDAスクールについてなど次世代の育成に関しても話し合われました。
(リポート 神沢 郁子)