2003年度TDAテキスタイルスクール東京
「テキスタイル加工編 」:織り、編み技術の最前線
■日時:11月18日(土)

 

織り技術の最前線
講師: 山口英夫 (株)織元山口代表取締役
 今回は米沢市の織元であると共に国際的アーティストでもある山口英夫氏に講演頂いた。   「プリントと同じ様に織れないだろうか」という出発点から、印刷原理を応用して写真の織物表現を  開発し、コンペ受賞で世界的に有名となった独自の作品スタイルに至る経緯。    そして「織りの技術はアート→デザイン→プロダクツの順でピラミッド状に広がってゆく」という  多層的ビジョンについて。     更に、現在織元山口が持つ4つの顔(ブランド)の各コンセプトを紹介頂いた。  例えば、作家(Hideo Yamaguchi) の「パーソナルな記憶を織る」という側面。また、織物のみならず ショップ&空間プロデュースまで広がるデザイナーとしての側面。(ORIMOTO YAMAGUCHI) 「どの様  に使うかというアプリケーションが今後の課題」と語る量産製品としての側面。(O.Yworkstudio)   そして独自のテクノロジーをサービスとして提供する新しいビジネスの側面。(e-orimono.net)    プロジェクターには氏が手がけた様々な作品が映し出されたが、そのアイテムの多様さと発想の柔軟さに  目を見張った。氏の活動と同様、多彩な講義内容であった。


講師:山口英夫

編み技術の最前線〜ホールガーメントによる新たな衣文化創造
講師:植田光紀 (株)島精機製作所東京支店長
無縫製ニットのパイオニアとして有名な島精機から植田光紀氏に来講頂いた。  冒頭に、人気TV番組「ニュースステーション」でオンエアされた映像。ここでは一般向けにホールガー メントとは何か、また島精機がその開発に至るまでの軌跡が分かり易く紹介される。とりわけ、機械  メーカーである同社がファッションの発信源としてコレクション発表をするという、これまでに無い  試みに焦点が当てられた。    この躍進の背景には、同社が真摯に取り組んできた流通の革新とイメージ戦略が有り、実にこの講義の  核心テーマとして詳細に解説して頂いた。  ホールガーメント編機の誕生によってもたらされる、ローコスト&クイックレスポンス化。  そして企画、生産、販売の各者が共通のビジュアルを仲介とする新しいリレーションシップの在り方  (ITからRTへ)。 更にそれらによってもたらされる市場と業界の活性化。    その他最新のニット技術に関する諸々を、多種多様なサンプルも交えて紹介して頂いたのだが、  店頭レベルまで視野入れたソフト開発など次々に新分野を開拓してゆく島精機のスピリットそのものが、  最も強く印象に残った。    感想:   2つの講義を通して思うのは”戦略”〈ロジスティック〉の重要性である。  とかく感覚的な立場のみで日々の仕事をしがちな自身に対して反省を感じると共に、優れた技術とその  開発に真剣に取り組む人々に対して「デザイナーにできる事、やるべき事」は何か。改めて考えようと思った。
                      (リポート 怡田勉)


講師:植田光紀